2009 - 2024、香港は変わってしまった（友人談）

「くろしお」が停車するのは
うめきた新駅ということを把握しておらず
待ち合わせに遅れてしまった私。
夕食をおごって機嫌を取り戻す作戦に出た。
（嘘です。元々おごるつもりだった）



14年ぶり、東京にいた時以来なので、
何の話をするか困ったが、
思いついた順に話す。



私「お土産、ありがとう。妻が喜ぶよ」
友「パイナップルケーキは香港じゃなくて台湾だけど、
　　奥さんが好きだというから。
　　ご両親とも分けてくれ」

15年前に初めて日本に来た時、
うちの実家に泊まって
みんなで近所のうどん屋に行ったことに対する
お礼なのだろう。義理堅い男だ。



友「これは大坂焼だな(と、スマホに書いた文字を見せる)」
私「えっ、そんな名前で呼ばれてるんだ」
友「ああ、大坂焼は香港中で見かける。
　　でもそれほど美味しいもんじゃない。
　　これがオリジナルだな、美味しいよ」



私「今回の日本旅行の目的は？もう4回目? いや5回目か」
友「実は元々、アイスランドに行こうとしてた。
　　火山噴火の影響があるから取りやめて、
　　大好きな日本にしたんだ」



私「今でもあの繁華街のマンションに住んでる？」
友「あそこは夜中でもうるさいから引っ越したよ。
　　それ以来ずっと同じマンションに住んでる。
　　香港は不動産の価格が下がって、
　　前より広くて高層階なのに家賃は安くなったんだ」
私「いくら？」
友「今のところは、月8800ドル。
　　昔に比べて安くなったもんだよ」

8800香港ドルを、日本円換算する私。
レートは今、1HKD = 19.5円くらい。



8800香港ドルは、17万円超。

なんだこの賃料…
一人暮らしだから、そんな広くはないと思うが…

友「15年前にお前が来た時のマンション、
　　あれは当時1万ドルくらいだった」
私「え！」

月20万円くらいのマンションに
タダで泊めてもらっていたのか？
と驚いたが、さらに調べると、
当時のレートは1HKD = 12円くらい。
家賃は日本円換算だと月12万円くらい、ということになる。

いや、それでも高いな。
香港の不動産価格、恐るべし。



彼「最近は大勢の香港人が海外に流出してる。
　　人気の移住先はカナダだな」
私「おお、昔カナダにいた時には
　　もう香港系の人が大勢いたよ。
　　今でもみんなバンクーバーに行くだろ」
彼「いや、トロントが人気だって」
私「え、今はそうなのか」



最後に彼を宿泊先のホテルまで案内した。

彼「日本は相変わらず賑わってるな」
私「いや、これ全然だと思うけど。平日だし。
　　週末はもっともっと混むよ」
彼「そうか、これでも駅近のホテルは全滅だった。
　　徒歩15分でやっと見つかったくらいだ」
私「海外観光客で賑わってるってことだね。
　　でも、香港も夜は賑やかだろ？」
彼「15年前とは全然違うよ、ずいぶんと静かになった」
私「そうなのか、なんか信じられないな」

15年前の香港の、真夜中でも明るいストリートを
埋め尽くさんばかりの人、そして色々なお店。
無数にある屋台の一つで、彼が肉の串焼きを買って
タレを多めに塗ってもらうよう頼んだ。
しかし店主は忙しすぎるということで、タレ追加を断った。
彼はさらに頼んだが、結局塗ってもらえず、がっかりしていた。

それほど賑わっていた香港の夜が、今は静かとは。
今なら、きっと追加のタレなんて
いくらでも塗ってくれるのではないか。
そう言いたかったが、その件を彼に言って
忘れていた怒りが込み上げてきたりしたら嫌なので、
黙っていた。

東梅田駅からさらに東に行ったところに、
彼の予約したホテルがあった。
無事チェックインを終えると、
我々はもう少しだけ会話し、さらっと別れた。
まるで、普段よく会っているかのように。

じゃあ、またな。

そんな感じで、いい別れ方だった。

エコバッグを持っていなかったので、
もらったパイナップルケーキを小脇に抱えて
帰途に着いたのだった。