妻はいずこ [日記]
珍しく出勤した日。
昼休みに新田次郎著『芙蓉の人』を
読み終えた。悲しい話だった。
さて、しばらく残業して
家に帰ると、妻の姿が無い。
あちこち探しても見つからず。
まさか、駅に迎えに来ようとして
どこかですれ違ったのか。
携帯を見ても、妻からの着信も
メッセージも無かった。
妻の携帯に電話をかけると、
妻の携帯がリビングで鳴った。
iPhoneで、妻のiPad miniを「探す」を
やろうとした瞬間、そのiPad miniが
ソファの上にあるのに気づいた。
一体何が起こっているのか。
もう外に出ているとしか思えない。
そう思ったが、靴箱を開けてみると
妻の靴は全てあった。
リビングに戻って名前を何度も呼ぶと、
「ククッ…」と笑い声が聞こえた気がした。
これは幻聴なのか。
冬の富士山頂ならきっとそうだが、
ここはエアコンの効いたマンションの一室である。
さては、まさか、あそこか。
妻は、最後に探したその場所にいた。
記録的な長時間、私に見つからなかったので、
めちゃくちゃ嬉しそうにしていた。
心配したんだぞ、と何度言っても
楽しそうに笑っていた。
じゃあ、まあ、いいか。